「太平洋の奇跡 フォックスと呼ばれた男」

有楽町スバル座にて


太平洋戦争で完全劣勢となってもサイパン島を死守するべく僅かに残った日本兵が玉砕総攻撃をかける。
玉砕命令の直後のサイパン島守備隊の自決。
鬼畜米兵という教えを信じて捕虜になるくらいならと自殺する現地に住む民間日本人。

玉砕命令を受けて総攻撃をかける大場栄大尉(竹野内豊)率いる18連隊だったが
兵隊がどんどこ戦死して行く中、
死体のフリをしててでも「生」に執着し、
残された軍人と民間人が生き延びる為に緻密な作戦で米兵への抵抗を続ける。

ほぼ壊滅に追い込みながら何故か最後の締めが打てないアメリカ側にもあせりが。
日本文化に詳しいルイス大尉は
わずか少人数の部隊に翻弄させられている事を知り
大場大尉を「フォックス」と呼び、恐れ、尊敬に値する感情が芽生える。


この戦争の結末は知っての通りだが、
この大場栄という軍人について知る人は少なく
当時サイパン島にいたアメリカ海兵が戦後、彼について書いた本がこの映画の原作だという。



最近あらすじが長いというクレームがきたが、
ここを短くするのって難しいな。
まぁいいか。


実際、そんなに手薄なのかな、捕虜の収容所。
ってくらい簡単に行ったり来たり。
でも、この映画、突っ込み所も以外と忠実らしい。

そしてアメリカサイドがいちいち疑問に思う問い。
「何故、日本人はあんなに死にたがる」
その質問はこっちが聞きたいよ。
おそろしい洗脳だ。

総攻撃をかけるシーンは以外としつこくしっかり描いていたかと思う。
もう無我夢中で、やけっぱちで、いびつでかっこ悪い。
そんなふうに次から次へと兵隊が死んでゆく。
総攻撃に参加出来ない傷ついた兵隊は自決する。
民間人は断崖絶壁から飛び降りて死ぬ。
何が「天皇陛下万歳」だ。

大場大尉の少数部隊と200人くらいの民間人を守る為の
トリックが面白い。
だけど、それもまた人を殺す為のトリックで
守った日本人の数よりも多くのアメリカ人を殺したという事実を
彼自身が自覚している。
戦争に正義も英雄もなかろう。
でも、正義と正義のぶつかり合いだからこそ
争いは無限にでかくなる。
それはいつの時代も同じだな。


戦争映画って画面が暗いけど
たまにはもっと最初からクリアな色があってもいいのになって思う。
現実のこの南の島は
本当はそれはキレイな彩色の島なんだよな。
それでもみんなが殺しあったんだよな。
っていう。

竹野内豊がかなり減量して挑んだって事だけど
痩けた頬にギラギラした目が印象的で凄みを感じられて良かったかと。
山田孝之くんももっとしぼれば良かったのに。
なんか丸い顔が緊迫感に欠ける。
演技はスキな分、余計残念。
軍帽が、永沢くんの体育帽みたいになってましたケド。

全キャスト、スタッフが戦後生まれである
この戦争映画は
日米共同で同等の目線が良かったのではないかと。
勝った国が正義ではなく、
負けた国がかわいそうではなく。

こんな事は愚かなんだ。


映画は映画といいたい所ですが
これは原作となった本を読んでみて完結させたい気持ちです。