「十三人の刺客」

有名な話なんでこれはネタバレ有りかと。

時は江戸時代も後半。
戦から離れて「武士」という地位が何なのか、さほど意味をもたなくなっていた頃の話。
腰に刀をブラさげていても実際にそれを使う事のない時代だった。

将軍の弟で明石藩主、松平斉韶:ナリツグ(稲垣吾郎)の鬼畜なまでの暴君を食い止める為に
家老の男が老中宅前で切腹自害。
そんな命を懸けた訴えは当然、鬼畜斉韶には通じる事もなく
将軍の弟という絶対的な盾に彼はのさばり続け、守られる。

そこで老中はこの国の存亡の為に斉韶暗殺を島田新左衛門(役所広司)に命令を下し、彼の元へ12人の武士が集結し、(途中山で1人拾う)
十三人の刺客が誕生する。

参勤交代の途中に先回りして明石藩一行を待ち伏せして斉韶の首を狙う。
斉韶の側近、鬼頭(市村正親)はその暗殺計画に気付き、
ダメ藩主斉韶を守る武士と
暗殺を実行する武士との決戦が始まる。


豪華すぎるキャスティングとこの伝説の日本映画のリメイクを三池崇史が撮るって聞けばそりゃー興味も湧くってもんです。

オリジナルの素晴しい所はまんま再現した部分と、
現代風というかむしろ三池風にリメイクされた部分とが見事複合されて
素晴しいです。

オリジナルとの最大の違いは刺客のトップ新左衛門が
最後の最後までじっと時を待っておいしい所を持ってくのではなく
最初から仲間達と一緒に斬りまくるって所ではないかしら。

斉韶の残酷すぎる殺傷方法はエゲツないけど
ここもまた三池っぽい。
斉韶はほんと、狂ってたもんね。

最後の大決戦は50分もかけて
緻密にねった準備と仕掛で13人対300人の死闘を繰り広げる。
オリジナルは50人くらいだったけど
まさかの300人越えって、三池さん、中途半端はしない人だよね。
しかもしつこくて、ただでは死なない刺客たち。
このしつこさも三池流って感じ。
実際に人を斬った事のない侍達が、武道ではなく
ただがむしゃらに人を斬る。
どんなに不格好でも、汚くても、
斬って斬って斬りまくる。


ダメな主君の就いたばっかりに、矛盾やら憤りを感じながらも
ただ忠実に斉韶を守らなくてはならない鬼頭の哀れさ。

時代がまた違えば、この鬼畜も活きたかもしれない斉韶がこうなってしまった孤独のようなもの。

山で拾った13人目の小弥太(伊勢谷友介)の侍嫌いの生き方。

武士の生き様、死に際を武士として探し続けてきた
12人。

なんだかどこも窮屈で、自由の選択がここでは極端で
権力と悪で周りを従えるのか
ただ、本能のままに生きるのか
それ以外の、実態にない武士精神の持ち主達は
みえないものを追い続け、
この暗殺計画で、彼らは武士としての威厳を得たのかもしれないけれど

どのタイプをみても
なんだかこの時代の限界が垣間見えて
哀愁が漂う。


役所広司はまぁ、当然安心して観れます。
人間味溢れる上司役が合わないはずがありません。

松方弘樹は、現代劇だとどうしても浮いてしまいがちだけど
ここは圧巻の殺陣を披露してくれててベテランの風格がたまらん。

それと鬼頭役の市村正親のおじさん3人がかっこよすぎて
素晴しい。


鬼畜を演じた稲垣五郎だけど、この人普段から表情がないっていうか目が笑ってない感じがあるから、演技してるって感じじゃないような感じ。
でも、ここをいつも目がいっちゃってる山田孝之くんがやったんじゃ、それはまた違うなって思うから
この鬼畜藩主に稲垣吾郎ってのは、想像以上ハマりだったのではないかと。

山田孝之くん演じる新六郎が戦に出る前に恋人に
「すぐ帰る。帰らなかったお盆になるから」
とかなんとかって感じの言葉を残すけど、
この生きてても死んでても
また会いに来るってのが、彼の強さだったのではないかと。

個人的には
伊原剛の殺陣と
チョイ役の岸田一徳がかなりツボです。


いい映画でした。