「ふたたび swing me again」

ごく普通の大学生の大翔(鈴木亮平)は
かわいい彼女もいて、大好きなトランペットを大学で楽しんでいた。

そんな穏やかな日常を変えるある訪問者が。

死んだと伝えられてきた祖父、貴島健三郎(財津一郎)がハンセン病香川県の施設に隔離され生きていた。
その祖父を引き取って一緒に暮らしてみたらどうかと
おとずれた看護士(MINJI)が言う。
祖父は死んだ事にして差別から家族を守ろうとした父(陣内孝則)だったが
息子である父は完治していればなんの問題もない事を知っていた。

ただ、根強いハンセン病患者とその家族への差別に
妻は困惑し、反対する。
病気は治っていも、正しい知識がない為にその差別はなくならない。

しかし一時帰省を果たした祖父は
大切な目的があった。

かつて戦後の自由を取り戻したはずの若者だった彼らは
ジャズに夢中だった。
そしてジャズ界の聖地、神戸のライブハウス「ソネ」のステージに立てる事が決まった矢先、
健三郎の病気が発病する。
掴みかけた夢が手のひらからこぼれた。

そして、愛した人も宿った子供も夢も全て失った。
ただ一度本当に愛したユリッペ(MINJI)も、
健三郎の子供を産んだ事で隔離され、淋しく死んで行った。

ユリッペの墓参りと果たすべき約束の為にかつてのバンド仲間を探す旅に出る。
知らずと同じ楽器を愛した孫の大翔との
チグハグな旅始まる。


まず、ハンセン病の差別についてあまり知らなすぎた。
この隔離するって間違った制度が見直されたのがほんの最近の話だってのもびっくりしたし、
医学の進歩で、この病気が隔離に値するようなそんなものでないって事が発表されているにも関わらず、その差別だけが根強く残っているらしい。

人間の尊厳を奪われて生きるしかなかった老人達が
今更どうやって生きたらいい。
苦悩するも、時間は戻らない。

この映画は財津一郎がかっこいい。
腹が出ててもかっこいい。
他のバンドメンバーも実にいい顔をしていて、かっこいいとはこうゆう事かと思わされる。
完全に老人の勝ちだね。
最も重要な最後のライブシーン。
はっきり言って吹き替えているのは素人が観ても分かる。
(ベースのみ本物のミュージシャン)
でも、あの長い長いライブシーンは全く飽きない素晴らしものだった。


長女の破談話とか
大翔が彼女にフられるとか
強引な差別描写が野暮ったい感じもあるし

健三郎達の若い頃の再現シーンが安っぽいのも気になるし

なにより何故か看護士とユリッペが同じ役者がやってるのもおかしいし
この女優は日本語がうまくないから台詞もスムーズじゃないから下手なのか?っておもっちゃう。
ここは最大の失敗かと。
すごく美人なのに使い方間違ってる。


でも、
今回は財津一郎に面して全て許す。
といった気持ちです。

大翔役の若い役者もかっこよすぎない自然な感じが
この、どこか地味な映画にはよく合っていた。

これでもかって泣かせに入るラストの総攻撃に見事に号泣して参りました。
多くを語らず、運命を受け入れて
最後を迎える健三郎が素晴らしい。

触れ合って生きる事ができなかった親子が
ようやく体温を確かめあえた事で健三郎の「父親」が表現できたのではないかと。


突っ込み所はちょいちょいあるものの
観て損はないかと。

美しい景色と音楽と
財津一郎の映画です。

暖かい。